ラオス 谷由起子の仕事展 10月21日(金)~29日(土)

ラオス 谷由起子の仕事展
2011年10月21日(金)~29日(土)
谷由起子さん在店日/10月27日(木)・28日(金)

ラオスの少数民族の村で、現地の人々とともに
手仕事の布を作り、日本に紹介している谷由起子さん。
素朴で愛嬌があって、力強い。
そんな愛すべき布たちに触れていただけたら。
谷さんもラオスから駆け付けてくださいます。

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はじめまして

私は1999年、初めてラオス北部ルアンナムターを訪ねました。
その当時のルアンナムターは、大げさに言えば「ここは弥生時代?」
といった感じの様子でした。
人は自然の恵みの中、自分の手と身体を使って 
暮らしに必要なものを生み出していて 
私はそんな人たちの力に強い衝撃を受け 
この人たちと手仕事に関わることをしたいと思いました。
翌2000年、再びラオス・ルアンナムターに渡り
村の人たちと一緒に手仕事を始めます。
2002年ラオスでH.P.E.
(Handicraft.Promotion.Enterprise.)Co,ltd.を設立しました。
ラオス・ルアンナムターで仕事を始め、現在12年目です。


H.P.E.の仕事-自然の恵みの中から糸になる素材を探し糸を生む

特徴を簡単に言えば、自家製の布づくりの延長の仕事です。
私が関わっている人たちは、蚕を育て絹の糸を引き 
綿花を育てワタの糸を紡ぎ 
山で葛のつるを採取し繊維を取り出しつないで葛の糸を績みます。
素朴な時代では、人が布を纏うためには
まず糸を何から作るかということが問題だったのだということに 
私はこの人達と関わるようになって気づきました。
自然の恵みの中から糸になる素材をみつけ 
糸を作るという、ほんとうは当たり前の布作りの原点。
そんな原点の仕事ができる人たちです。 
なので、H.P.E.はその原点を大切にした布作りを心掛けています。
糸の素材を見つけることから仕上げまでやる。
昔だったら誰もがそうしていた自家製の布の延長であることが理想です。

これから

初めて私がルアンナムターを訪れたときは 
お金というものを大して必要とせず、電気もない暮らしでした。
例えば、魚がたくさんとれても 
食べる量は限られているので、近所の人に分けて終わり。
動力は人力なので、人力でできる範囲の暮らし。
エコのことなど考えなくとも 
自然にヒト以外の生き物とのバランスも保たれた暮らしです。
お金というモノが暮らしを動かし、電気もやってくると
ヒトの暮らしは大きく変わります。
魚がたくさんとれたら売ればよい。
たくさんとれればそれだけお金になる。
根こそぎとってしまいます。
12年間、ラオスの村で暮らし、お金と電気は
ヒトの価値観を激変させるのだということを身にしみて感じています。

2011年3月11日。 

9日に帰国した私は11日の2時46分東京にいました。
ほんの一瞬でヒトの世なぞ自然の力はひっくり返せるのだと思いました。

12年前、ラオスの村の人たちは、素朴な力がみなぎっていました。
急速に時代が変わっていけばその力も変わっていかざるをえないでしょう。
そんな変化の中で、これからどんな仕事が可能なのか、悩みます。
「こうすれば、素朴な力強い仕事は継続できる」
という方法は私にはみつかりません。
はっきりしていることは
私は、素朴で力強い仕事が好きだということ。
素朴で力強い人たちとの布作りの仕事は愉しいということ。
好きで愉しいことを、とにかく思う存分やる。
やれるだけやる。
彼らとのモノ作りを愉しんで愉しんで愉しんでいく中で
何かが見えてくるかもしれません。見えないかもしれません。
まずは、やってみる。それだけです。


2011年8月2日
H.P.E.谷由起子